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【AAAMIN】2024年3月号 薬剤師業界・調剤薬局業界はこの先どうなっていくのか。調剤薬局の加速するM&Aと淘汰の波。

廃業やM&Aが話題となる薬局業界

加速するM&Aと淘汰の波。

近年、調剤薬局のM&Aが増え、度々話題となっている。

 

これは1,200社あった医薬品卸がどんどんと倒産やM&Aを繰り返すことで減少していき、100社程度になっている流れから調剤薬局もいずれは倒産またはM&Aで社数は減っていくと容易に考えられた将来である。

 

その流れは前々から確かにあったのだが、コロナ禍を背景に保険医療の寿命は短くなったのかもしれない。

保険薬局にとって生殺与奪の権を握っている【調剤報酬】

2年に1度改訂されるが、上がることは珍しく、業務が増えるか報酬が減るという悪い流れである。

ドラッグストアは保険外収益もあるが、調剤薬局の多くは調剤業務がメインではないだろうか。

 

中小チェーン薬局でも、医療コンサルタント業務などの他の収益柱を持っている調剤薬局は経営面ではそこまで苦しくなっていないという話も耳にする。

 

保険薬局事業もやっている大手卸企業は卸である強みを使ってか、Amazon.jpで売れ筋人気商品を販売している。

 

私が数年前にAmazon.jpで販売代行していた商品は1商品で月に150~200万円程、広告費は0円で売り上げていた。

 

作業は納品された箱にただシールを貼り、Amazon倉庫に横流しするだけで売れていくドル箱商品であった。

 

現在はメーカーから卸してもらえなくなった影響で取り扱いはしてない。

 

しかし、久しぶりに商品ページをみると大手卸がAmazonへのFBA販売に参入していることに気づいた。

 

現在、その商品はそこの企業がメインで販売している。

 

このように、保険調剤以外での収益柱を立てようと動いている調剤業界の企業が増えてきているように思う。

 

中には、PB商品を作って販売している薬局もあるが、ノウハウがないまま作ってしまい不動在庫を大量に抱えてしまったという話も耳にする。

しかし、保険外収益で新規事業を作るためであれば、必要な挑戦だと考えられる。

 

新規事業に投資をして育てるというのは、簡単ではない。

 

多くの調剤薬局は個人レベルでやっているところが多く業界全体の7割近くは個人薬局と言われている。

 

経営者の高齢化も進む一方でDX化や時代の流れに柔軟に対処できますか?というと難しいかもしれない。

※今でも電子薬歴ではなく、紙薬歴の薬局もある。

 

近年、コロナ禍をきっかけとした世間から医療業界への風当たりが強くなってきていることと政府の医療費削減、

これらの影響か医師に対する診療報酬も2024年から減点される。

 

医療業界というのは、社会保険料などの税金が財源なので

比較的、デフレには強い職業である。

(株式市場で医療業種はディフェンシブ株とされる)

 

以前、不動産に関する記事をいくつか書いたが、その時に

【今後の想定される政府の思惑】について触れた。

 

その際、政府はマイナス金利解除(利上げ)をしたい。

 

しかし、それだけでは国債の金利も上がってしまうので

「円の価値を下げるためにインフレを作るだろう」と紹介した。

 

現在は物価高に国民の給与所得アップがついてきていないのでインフレとは言い切れない状態である。

(※物価高に経済成長がついていかなければ、スタグフレーションである。)

 

今後、政府の後押しで賃金アップが行われていくとした場合、インフレとなるので斜陽産業の薬局業界は少し置いてけぼりになるかもしれない。

 

開業医に関しては、【租税特別措置法第26条】と呼ばれる年間総売り上げが5,000万円以下であれば実際に使った経費以上の経費計上が認められ、税金を抑えることができるというものがある。

 

これは開業医の経営を安定化させるためにできたもので、年間売上が2,000万円の医院であれば、1,440万円までを経費として計上できる。

 

開業医は個人で小さく生き残っていくことはできるかもしれないが、今後の開業医が制度利用で生き残る方向に進むと門前薬局は生き残れない。

 

今回の改訂から*精神科クリニックが診察患者数に応じて30分以上の診察などが掲げられたため、この制度利用をする開業医が増えるかもしれない。

*患者20人に1人以上は30分診察

*毎月10人以上は60分以上診察

 

調剤薬局の大手チェーン(業界3位)であった

【さくら薬局】(クラフトファーマシー)

がM&Aで失敗し、経営破綻したのは記憶にも新しいはずである。

 

一時期は上場もしていた1,000店舗以上を超える大手調剤薬局。

 

2022年2月に【事業再生ADR】を申請。

これはM&Aを繰り返すために50以上の銀行から融資を受けて規模拡大をしていたが、返済ができなくなり破綻したというもの。

 

調剤報酬の改悪は通常通りのことだが、根本的なトドメを刺された原因はコロナウイルスによる自粛と考えられる。

 

2024年頭で言えば、阪神調剤(I&H)がスギHDに買収された。

この阪神調剤(I&H)も過去に上場している。

上場企業は資金調達が市場からできるが、非上場になっている場合、銀行から見切りをつけられると自身で売上を立てて、生き残れなければ詰んでしまう。

 

調剤薬局業界のM&Aも相場としての最高値は既に過ぎており、売り抜けるためには個人レベルではなく、ある程度の店舗数や売上が必要になるという噂も耳にする。

 

・DX化についていけない高齢薬局の廃業

・調剤報酬減による廃業

・敷地内薬局に対する改訂

 

個人薬局だけではなく、大手調剤専門薬局も安心してはいられない状況が近づいてきていると考えられる。

おそらく、今後の調剤薬局の【出口戦略】は

①自身で保険外収益を作り出す

②ミニマムで小さく生き残る

③中規模化してM&Aで売却

などになるのではないだろうか。

 

保険外収益を作るというのも、経営的に余裕があるうちにしかできないことなので、首が締まりかかってきた状況では、勇気も出せず②の施設・在宅特化などで生き残る薬局が増えるのだろうか。

薬剤師・薬局業界を待ち受ける2035年、2045年問題

薬局業界の規制、市販類似薬の保険外しは来るのか?

今後の薬剤師に求められるものとは

近年、施設を持つ企業が調剤薬局を経営するケースが出てきている。

 

また調剤薬局でも外来ではなく、施設や在宅に特化するためだけの店舗を持つ薬局も出てきている。

 

今は【2035年問題】と呼ばれる団塊世代が85歳以上になることから施設や在宅に対して誘導するよう報酬がついている。

※65歳以上の人口は33.4%となり、3人に1人が高齢者となる。

 

しかし、これも地域支援体制加算が多くの薬局が取れるようになれば、要件を厳しくしたのと同様、いずれはハシゴを外されるだろう。

 

個人的には、健康保険組合連合会が長く訴え続けてきた【市販類似薬の保険外し】は遅かれ早かれ行われると思っている。

 

以前、ある製薬企業の方に教えて頂いたことがあるのだが、医師会の力というのは地方では絶大に強いが、都会では手が回りにくいそうだ。

 

そのため、*零売でも地方は卸全体へ零売薬局に対する取引規制などがかけられたが、都会の零売薬局が生き残れている背景にはそういう事情もあるのかもしれない。

零売という業態は2024年で規制が決まる。

零売が規制されても良いのだが、その分【市販類似薬の保険外し】はしてもらいたい。

 

近年、AIの発達が想像以上に早くなっており、昔から言われるAI代替の日も遠くはないかもしれない。

 

AIにおいて【2045年問題】と呼ばれるものがある。

人工知能が人類の知能を越え

【シンギュラリティ(技術的特異点)】を迎える年。

しかし、現時点で既にchat-GPTなどのAI分野が想定の5年10年早く進歩しているという話もある。

 

近い将来、AI技術を用いて診断や服薬指導が行われるようになることも容易に推測できる。

(※既に人工知能は医師国家試験でも合格点を叩き出すに達している。)

 

人工知能により業務が削減され、人員削減される可能性があるのは薬剤師だけではなく、税理士など士業の多くが影響を受けると予測されている。

 

そうなった際に、ビジネス視点で人に必要なものは

【コミュニケーション能力】だと思っている。

 

そう思っている、考えている理由は後述する。

 

上場企業であるサイバーエージェント代表取締役である藤田晋さんの自伝には、学生時代から上場するまでの経緯が詳細に書かれている。

 

その書籍を読んだ際、【営業力】さえあれば事業は存続できるという感想が強く残った。

 

そんなことを思う最中、1着30万円以上するようなハイブランド衣類を取り扱う知人アパレル企業様の出展・販売に声をかけて頂き参加した。

 

そこの企業様はオーナー様達のコミュニケーション能力が非常に高く、県内の常連様へ連絡を入れたりすることでイベント会場に来てもらい購入していただいていた。

 

見ていると新規顧客というよりも既存顧客で売上を立てている感じで、非常にLTV(Life Time Value)が高いように思えた。

 

その営業力もあってか、来場者数は多くなかったが

1日で3桁万円の売上を作っていたのである。

「ビジネスの基本は営業力にあるな」と感心した。

 

上述で営業力について触れた。

 

1974年から始まった門前薬局というスキームが主流の保険調剤業界だが、営業努力がそこまで必要ないビジネスモデルである。

 

開業医が集客(集患)を行い、近くの薬局へ処方箋が持ち込まれる。

 

顧客を0から見つけ出す広告宣伝費を抑えやすい。

 

ただ、これは自薬局へ安さや景品、ポイントなどを餌として患者様を誘引すること自体が規制されていることから仕方がない側面でもある。

 

2021年頃に【調剤工場】という構想を知人経由で耳にしたことがあった。

当時、「医薬品卸が薬剤師を雇用し、調剤工場を作れば利益率は高くなるだろう」という印象を受けた。

 

海外のように電柱が地中化されていれば、ドローンで自宅まで配送するということができたかもしれないが、日本ではそのような問題点が残っているため、ドローン配送に対しては懐疑的に思っている。

 

・調剤工場化による対物業務の削減

・AIによる業務削減

 

これらが今後、もし行われたとしたら調剤に関する薬剤師の売り手市場は大きく変わることになる。

 

そうなった場合、どういう人が社内で生き残れるか?

・コミュニケーション能力

は外せないと考える。

 

実店舗での相談対応、社内のマネジメント業務

取引先企業との友好な関係性、情報収集

 

結局、組織に属して働く人では他者との繋がりを完全に無くすことは難しいだろう。

 

また、薬剤師免許を欲している業界というのは医療業界以外にもあるので、そういった場所で働く人も増えるのでは

ないだろうか。

 

化粧品関連の企業様から、管理者として有資格者が欲しく

「良い薬剤師さんいないですか?」と聞かれることも

少なくないので需要は間違いなくあるだろう。

 

今の60代は逃げ切れるかもしれないが、40,50代未満は

調剤だけで定年まで逃げきれないかもしれない。

 

<<今後の薬局業界はどうなるのか?>>

 

国は薬局数を半分にすると前々から伝えている。

溢れる薬剤師を有効活用できる制度改革もして頂きたいところである。

 

今後、「病院の調剤業務で食べていく」という方は他の業界を勉強したりなどをするよりも本業を勉強して続けていくことが大切かもしれない。

この業界は狭いので、意外と紹介などで転職ができたりするため、人となりを知ってもらえたうえでの人間関係構築(同期・後輩・先輩含む)はやっておくと損はしないと考えられる。

 

<<調剤薬局やドラッグストアの場合>>

調剤報酬の改訂から収益は先細りしていくため経費の削減、保険外収益の確保も試みていくはずである。

 

日本調剤であれば資本力を利用したワンコインOTC医薬品【5 COINS PHARMA】などの新規商品の投入。

 

ドラッグストアであれは、PB商品の投入、新規事業投資

外貨を稼ぐため海外出店、他業界との資本業務提携

 

海外出店の例としては、サイゼリヤは国内では格安価格での提供を続けているが赤字で、海外出店による黒字利益で補填をしている。

 

今は日本が諸外国から安い国となってしまっているので,

外貨を稼げるチャンスを使わない手はないと考えられる。

 

保険外での収益を立てるとなると、ビジネスマンとしての考え方や側面が外せなくなってくると考えられる。

 

実際、製薬企業やドラッグストア、チェーン薬局等ではコロナ禍ぐらいから社内ビジネスコンテストなどをしているという話も意外と耳にする。

 

市場規模の何%を取りにいくのか?

KPIの正しい設定、LTVの追求、DX化、D2C

 

今後、これまでの調剤利益で内部留保として蓄えていた資本がある企業程、新しいことに挑戦できるため、新しいフェーズへと進んでいくと考えられる。

 

資金の確保となると上場企業が強く、大手企業で働くことは大きな仕事を経験するうえでも大切かもしれない。

 

また業界が成熟し切ると、市場が拡大しないのでポストも埋まってくる。

 

出世することも難しくなるかもしれない。

 

M&Aもいずれはわざわざ買収しなくても経営難から格安で売ってもらえる時代になるだろうし、身の振り方を考えておくことも長い目で見れば大切か。

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