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【AAAMIN】2024年3月号 小林製薬の紅麹製品が問題に 紅麹とは何か?紅麹で腎臓疾患になることはある?それは一体なぜ?

小林製薬の紅麹製品で死亡例

紅麹が危険なのか?それとも他の成分なのか?

小林製薬の紅麹製品が2024年1月頃から腎障害などを原因とした入院患者の原因となっているのではないか?ということで自主回収などになっている。

 

そんなわけで、紅麹と医薬品の歴史、紅麹と横紋筋融解症、欧州や台湾での紅麹の扱い、横紋筋融解症と腎不全について触れていく。

 

・紅麹とはなんなのか?

紅麹は沖縄の伝統食材でもあり、

血圧上昇の抑制を持つ【γ-アミノ酪酸】

コレステロール低下の【モナコリンK】

に着目して研究が行われてきた。

 

紅麹は赤かび(Monascus spp.)によって発酵させた米や大豆などの食材から作られる発酵食品のことである。

 

この赤かびは、日本や中国などで伝統的に利用されてきました。

 

紅麹は、発酵過程で赤い色素を生成するため、赤い色を帯びた食品として知られています。

 

紅麹には赤麹米(あかこうじまい)や赤麹豆腐(あかこうじとうふ)などの様々な形態があり、これらの食品は、日本や中国の伝統的な料理に使用されるほか、健康食品としても人気があった。

※参考:研究報告 / 沖縄県工業技術センター

紅麹発酵物の製造に関する研究

 

台湾では、前々から紅麹に関する危険性が指摘されていたことから2022年11月8日付で法改正されている。

 

赤麹を含む健康食品は

「この製品をスタチン系およびフィブラート系のコレステロール低下を目的とした医薬品または、グレープフルーツと組み合わせて摂取すると、肝臓や腎臓の損傷や横紋筋溶解症を引き起こす可能性があります。」

と警告が容器やパッケージに表示されるようになりました。

 

※参考:Regulations Governing the labeling of health food

 

・紅麹に含まれるモナコリンKとは?

紅麹に含まれ、コレステロールの低下などが期待されてきたモナコリンKは構造式がロバスタチンに酷似しており、論文・学術誌等でも前々からモナコリン系(ロバスタチン)と記載されたりもしてきた。

 

モナコリンKは天然のスタチンとも呼ばれる成分であることから、モナコリンKの高用量摂取やスタチン系、フィブラート系医薬品と併用することで【横紋筋融解症】の副作用リスクが向上することは容易に推測できる。

 

横紋筋融解症については後述する。

※日本補完代替医療学会誌 第6巻 第2号 2009年 6月 45-51

 

・麹の種類について

麹にも種類が多くある。

味噌、醤油、日本酒には【黄麹】

(黄色麹:Aspergillus oryzae)

泡盛には【黒麹】

(黒色麹:Aspergillus awamori)

焼酎には【黒麹】や【白麹】

(白色麹:Aspergillus kawachii)

紅酒には【紅麹】

(紅麹:meniscus)

 

紅麹は、カビが産生する色素の紅色が綺麗な紅色であることから着色料としても利用されている。

紅麹は中国では漢方薬などの医薬品としても利用されてきた。

 

1979年にモナコリンKは強力なコレステロールの合成阻害作用(HMGCoA-還元酵素阻害)が発見された。

1987年にロバスタチンなどの構造式から派生したコレステロール低下薬が製薬会社を通じて日本だけでなく世界中に販売される。

※日本補完代替医療学会誌 第6巻 第2号 2009年 6月 45-51

 

 

紅麹で腎障害になる可能性は?横紋筋融解症とは?そのメカニズムは何?

横紋筋融解症のメカニズムと腎障害のメカニズム

紅麹は危険なのか?モナコリンKはコレステロールを低下させる有効成分?

・横紋筋融解症について

HMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチンは、血中コレステロール値を強力に低下し、虚血性心疾患の発症、再発の予防、および総死亡を抑制する高脂血症治療薬である。

 

さらに、冠動脈疾患を有する患者での脳卒中発症抑制効果も近年報告されている。

 

しかし、まれに重篤な合併症として横紋筋融解症を発症することが知られている。

 

スタチンの1種であるセリバスタチンにより横紋筋融解症が発症し、多数の死者が出たことから2001年に日本を除く世界中で発売中止になっ たことがある。

※日本に関しては、併用することで問題となるゲムフィプロジルが使用されていなかったことから、先延ばしされていた。しかし、最終的に回収と販売中止となっている。

 

昔から、脂質などに影響を与える医薬品では高頻度ではないが【横紋筋融解症】の報告がされてきた。

 

筋肉障害の機序としては、クロフィブラート がよく検討されていた歴史があり、clチャンネルをブロックすることにより、過分極が起こらず、持続した筋肉収縮状態が引き起こされることでミオトニア、および横紋筋融解症が引き起こされると推測されている。

※ミオトニアとは、筋肉の持続収縮や筋肉弛緩障害のこと

 

薬物により細胞膜コレステロールのリン脂質比率が変化し、細胞膜の泳動性が変化、クロライドイオンの流動性が低下、ブロックされる。

 

筋肉細胞では、静止膜電位の 80% はクロライドイオンによるとされており、ブロックが生じると細胞膜の重篤な機能障害が出現し、脆弱になり横紋筋融解症が出現すると推察されている。

 

横紋筋融解症とは、骨格筋の細胞が融解、壊死することにより、筋肉の痛みや脱力などを生じる病態の事を指す。

 

その際、血液中に流出した大量の筋肉成分(ミオグロビン)により腎臓の尿細管がダメージを受けた結果、急性腎不全に至る。

用量依存的にリスクが高まるので服用量に注意。

 

基本的な治療方法は 服用の中止、輸液療法、血液透析が行われる。

 

<<主な症状特徴>>

①手足の痺れ

②手足や腰、肩の筋肉が痛い

③ミオグロビン尿(赤色の尿)が出る

④筋肉に力が入らない

などが挙げられる。

他にもあるが、他疾患でも生じるため割愛する。

※参照:薬物相互作用によるセリバスタチンの販売中止

pharmaceutical and Medical Device Regulatory Science Vol.49 No.9(2018)

 

<<小林製薬の紅麹事件>>

横紋筋融解症になると腎障害になり、入院や透析まで行くと死亡率が高まることについて触れた。

今回の紅麹も腎障害による入院で数名の命が奪われている。

 

小林製薬としては、まだ原因の特定をしている段階で【未知の物質】とだけ触れているが、原因物質の断定や特定にまで至っていない。

 

NMRなどの分析により、いずれは特定されるだろうが、カビが産生する一種の成分なのかもしれない。

 

・横紋筋融解症による腎不全のメカニズム

慶應義塾大学医学部の平橋淳一専任講師、大久保光修共同研究員らの研究グループは、総合診療教育センターの研究の一環として横紋筋融解症による急性腎障害(Acute Kidney Injury:以下、AKI)発症の新たなメカニズムを解明し、さらに、その発症を予防する新たな生体内物質を発見した。

 

ここから腎障害リスクが一つ見える。

 

白血球の一細胞であるマクロファージの起こす細胞外クロマチン放出現象(Macrophage extracellular traps・マクロファージ細胞外トラップ:以下、METs)に注目した結果、腎臓におけるMETs放出が、横紋筋融解症に続発するAKI発症のカギを握ることを発見。

 

血小板がヘムを認識して活性化し、マクロファージと相互作用をしてMETs放出を誘導することを今回の研究から発見した。

METs、NETsについては後述する。

※参照:横紋筋融解症による急性腎障害発症の新たなメカニズムを解明-発症予防の薬剤開発へつながる成果-慶應義塾大学医学部 日本医療研究開発機構

 

好中球細胞外放出トラップ(NETs)について

NETsは細胞の中にあるDNAやヒストンを顆粒球タンパク質と細胞の外へと放出する現象である。

つまり、細胞内にある厄介なものを捨てる身体の仕組みであるが、色々な炎症性疾患の増悪に関与しているのはないかとも指摘されている。

 

細胞外へと放たれた物質は損傷を引き起こすとされ、その損傷等含め、癌細胞の転移機序としてもNETsの関与が指摘されている。

 

NETs誘導に必要なヒストンアルギニン残基をシトルニンへ変換する酵素【Peptidearginine deminase 4(PAD4)】 をノックアウトさせたマウスでは、転移が低下することも明らかになっている。

 

横紋筋融解症により筋肉内の成分が血中に流出

鉄が血小板に結合

血小板が活性化

血小板がマクロファージと

相互作用を引き起こす

血小板内のヒストンなどを細胞外へと放出

(マクロファージ細胞外放出トラップ:METs)

METsにより尿細管が障害される

急性腎障害

近年、明らかにされた横紋筋融解症による急性腎障害メカニズムを簡単にまとめたものである。

※参照:ファルマシア vol.57 No.4 2021 321

横紋筋融解症による急性腎障害発症の新たなメカニズムを解明-発症予防の薬剤開発へつながる成果-慶應義塾大学医学部日本医療研究開発機構

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