痔(じ)は、肛門部に発生するさまざまな疾患を指します。主に「内痔核(ないじかく)」、「外痔核(がいじかく)」、「痔瘻(じろう)」の三つに分類されます。
1. **内痔核**:
- 内痔核は、肛門の内側にある静脈のうっ血によって生じるもので、症状としては出血、腫れ、時には痛みを伴います。進行すると、肛門から脱出してしまうこともあります。
2. **外痔核**:
- 外痔核は、肛門の外側に位置する静脈がうっ血して形成される病変で、痛み、腫れ、かゆみが特徴です。特に排便後に痛みが強くなることがあります。
3. **痔瘻**:
- 痔瘻は、肛門周囲の腺から始まる感染が原因で生じることが多く、肛門近くに穴が開き、そこから膿や排泄物が漏れることがあります。
痔の治療方法は、そのタイプや症状の程度によって異なります。
軽度の場合は、食生活の改善や局所治療薬の使用で改善することもありますが、症状が重い場合や持続する場合は、外科的な手術が必要な場合もあります。
日常生活での予防としては、食物繊維を多く含む食事を心がけ、水分を十分に摂ること、定期的な運動によって便通を良好に保つことが重要です。
また、長時間同じ姿勢を避け、定期的に動くことも予防につながります。
痔の症状がある場合や、自己判断が難しい場合は、医師の診断を受けることが重要です。
<<痔の治療>>
「治療目標」
生活習慣の改善を主旨とした保存的治療
軽快しない場合は、手術的な処置を行う。
1.保存的治療
・過度のストレスを避ける
・規則正しい食生活
・排便時にいきみをしない
・便通異常のコントロール
2.硬化療法
硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸注射液(ジオン注)を1つの痔核に4ヶ所
3.薬物療法
・出血や肛門痛:ボラザG坐剤、軟膏
ネリクロプト坐剤、軟膏
・排便コントロール:便秘には緩下薬
下剤には整腸薬、ポリカルボフィル
<<痔核治療のALTA療法>>
ALTA療法は、日本で開発された痔核(内痔核)の治療法です。
ALTAは「Aluminum potassium sulfate and tannic acid」の略で、硫酸アルミニウムとタンニン酸を主成分とする注射液を使用します。
この治療法は、手術的な切除を行わない非侵襲的な方法で、内痔核の硬化と縮小を目指します。
<<ALTA療法の治療プロセス>>
注射準備:患者は局所麻酔を受けた後、内痔核に直接、ALTA注射液が注入されます。
作用機序:注入されたALTA液が痔核組織に作用し、組織の繊維化を促進します。これにより痔核が硬化し、次第に縮小していきます。
治療後の経過観察:注射後、痔核の縮小を観察しながら、数週間にわたって患者の状態をフォローアップします。
内痔核=排便後の出血、疼痛、脱出
外痔核=血栓による持続的な疼痛持続
痔瘻=肛門周囲に感染症。
そこから膿などが生じて、排出通路用の穴が肛門周囲にできる。
<<効果と利点>>
非手術的治療:切除手術を行わないため、術後の痛みが少なく、日常生活への復帰が早いです。
高い治療効果:多くの症例で痔核の著しい縮小または完全な消失が報告されています。
再発率:適切に治療された場合の再発率は低いとされていますが、ライフスタイルの改善も同時に推奨されます。
<<注意点>>
適応:ALTA療法は特定のタイプの内痔核に適応しており、全ての痔核に適用可能なわけではありません。
副作用:注射部位の一時的な痛みや不快感がありますが、重大な合併症は稀です。
ALTA療法は、特に日本で広く採用されており、多くの患者にとって有効な選択肢となっています。