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なぜ傷口が治ると痒くなるのか?
傷が治る過程で、多くの人が経験する「痒み」は、体の自然な治癒プロセスの一部です。
これには、免疫系の反応や皮膚の再生が関与しており、複数のメカニズムが関係しています。ここでは、その理由と科学的背景を解説します。
1. 炎症と免疫反応
傷が発生すると、体は直ちに免疫系を活性化し、細菌や異物を排除するための化学物質を放出します。
これには、ヒスタミンやインターロイキンといった炎症性物質が含まれており、これらは傷口の周囲に集まり、痒みを引き起こします。
特にヒスタミンは、アレルギー反応や炎症に関連する物質で、傷口付近に大量に放出されることで、かゆみを誘発します。
2. 神経の刺激
皮膚には「痒み専用」の神経線維が存在しており、これが刺激されると脳に「痒い」という信号が送られます。
傷口が治り始めると、新しい皮膚細胞が形成され、その過程で神経が刺激され、痒みが発生します。
この神経刺激は、皮膚の再生やコラーゲンの生成に伴うもので、特に「増殖期」と呼ばれる治癒の中期段階で強くなります
この段階では、皮膚が引っ張られるような感覚や傷口が収縮するような感覚があり、これが痒みとして脳に認識されるのです。
3. 乾燥と細菌の影響
傷口周辺の皮膚が乾燥すると、痒みがさらに悪化することがあります。
これは、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に対して敏感になるためです。
また、傷口に細菌が侵入することも痒みを引き起こす要因の一つです。
細菌によって汗腺が詰まったり、炎症が引き起こされたりすることで、痒みが増幅されます。
4. 治癒のサインとしての痒み
興味深いことに、傷口の痒みは、体が正常に治癒しているサインとも言えます。
皮膚が再生し、新しい組織が形成される過程で、神経が過敏になり、その結果として痒みを感じるのです。
したがって、痒みは必ずしも悪い兆候ではなく、治癒が進んでいることを示すポジティブなサインと捉えることができます。
5. かゆみへの対処法
痒みを抑えるためには、いくつかの対策があります。
例えば、保湿剤を使用して皮膚の乾燥を防ぐことや、冷却パックで傷口を冷やすことで痒みを軽減することが可能です。
特に乾燥が痒みを悪化させるため、無香料の保湿クリームを使用することが推奨されます。
また、抗ヒスタミン薬や局所麻酔クリームも有効です
6. 注意点: かゆみを我慢する理由
痒みを感じたときに掻くことは、非常に危険です。
掻くことで、皮膚の表面が傷つき、せっかく治りかけた傷が再び開いてしまう可能性があります。
また、掻き傷から細菌が入り込み、感染のリスクも高まります。
さらに、掻くことで一時的な痛みが発生し、その痛みが再び痒みを引き起こす「痒み-痛みサイクル」に陥ることがあります
したがって、かゆみがあるときは、掻かないようにすることが重要です。
まとめ
傷が治るときの痒みは、体の治癒プロセスの一環であり、主に免疫反応や神経の刺激によって引き起こされます。
痒みは治癒が進行しているサインでもありますが、掻くことは感染や治癒の遅延につながる可能性があるため、適切なケアが重要です。
保湿や冷却などの対策を取りながら、傷口を清潔に保ち、適切な方法でかゆみに対処することが推奨されます。
このように、傷口が痒くなる理由を理解し、適切な対策を講じることで、治癒を早め、トラブルを回避することができます。
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